「愛しのキューバ!」

樋口聡さん

日本キューバ外交関係樹立75周年記念スライドショー


 今年は日本とキューバの外交関係がはじまってから75周年目にあたるということで、地味ながらもCUBA Year。というわけで、今回は日本でいちばんキューバ本をお書きになっている樋口聡さんをお招きしました。

 イベントは旅行作家であり写真家でもある樋口さんが撮りためたキューバの写真をスライド上映していく形で進行したのですが、まずは上映の前に少し樋口さんからお話がありました。樋口さんとキューバとの関係。。

 「僕がはじめてキューバを訪れたのは1991年です。旅行先の候補としてベトナムかキューバか少し悩みました。当時はベルリンの壁が崩壊し、ソ連も崩壊しと東欧の社会主義国がどんどんひっくり返っていた時代。これから世界が変わっていくんだという雰囲気がすごく漂っていた。で、ほかの社会主義国がひっくり返る前にひと目見ておきたいなと。ベトナムは近いし、情報もけっこうあった。一方キューバは、日本から遠い。しかも、ガイドブックの類をみても数ページ程度の情報しかない未知数の国。というわけで、キューバに飛んだわけです。はじめて訪れた1991年頃というのは、まだみんながドルを持てない時代。キューバの人々は貧しい平等のなかで暮していました。1993年のドル解禁から経済が少しずつドル化し、小金持ちが登場し始めました・・・」

 そんなふうなきっかけがあって、樋口さんとキューバとの付き合いは始まったんだそうです。そしてさっそくスライド上映に。






カリブの楽園 キューバで恋する
祥伝社黄金文庫 定価:562円(税込)

現代キューバを切り取って集めたノート。
サルサと踊りと酒、そしておおらかな恋愛の伝統が、
世界中の男と女を魅了する。
キューバの楽しみ方を徹底紹介!



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 キューバの片田舎にある農家、典型的なランチスタイルで食事を楽しむ家族。街中、エンストして動かなくなったソ連製のクルマをうしろから押している若者たち。制服の赤いスカートを穿き、笑みを浮かべる小学生の少女。ハバナ映画祭、キューバの有名な女優。今は亡命して、もうキューバにはいない人気ニュースキャスター・・・と、それぞれの写真を通して、キューバ人気質や街の様子、政治的な背景などのお話をしていただきました。その内容を少しだけピックアップしてみます。


▼身だしなみ
 「キューバでは子供のころから身だしなみはきちんとしています。女の子は髪型もかなり凝っていて、小学生でもみんな花をあしらっていたりします。日本と違って、子供用の靴も大人用みたいにきちんとしています。お母さんがすごく気を遣って身だしなみをしっかりさせているみたいです。15歳くらいまでそうして世話を焼いて、それ以降は自分でちゃんとさせるようです。女の子に限らず、男の子も清潔。乱れた髪やボサボサの髪、しわがれたシャツを着ているというのは、キューバ人にはありえないこと。身だしなみとして、髪・靴・ベッドメイク、この3つは親がちゃんとさせているようです」


▼成人式
 「キューバでは15歳で成人式を迎えます。ヨーロッパ社交界の伝統が非常にありまして、、女の子であれば、15歳になったら綺麗なドレスを着させてお披露目をして社交界にデビューさせる。。わりと象徴的な思いがしますね。身だしなみをきちんと整えて、カメラマンを引き連れて高級ホテルで成人式をする。もちろんそれができないファミリーもあります。写真ひとつにしても、カラー写真1枚分のお金しかなかったり、カラーが無理だからモノクロということもあるようです。写真館をおさえて、あれこれポーズをとる。わざわざドルショップのレジ袋を持ってポーズをとるのは、それがひとつのステイタスにもなっているから。クライマックスは、ベッドの上で記念撮影。成人式が済めば、もう大人として扱われるということです。成人しても恋人がいないなんて恥ずかしいということらしいです。しかし、なぜ15歳か? まぁ15歳がピークって気もしますね(笑)」


▼花
 「キューバの人たちはよく花を買うようです。街中でもよく花を抱えている人を見かけます。仕事帰りに花を買って家に帰る。ちょっとしたことで人に花をプレゼントする。お金がなくてもプレゼントする・・・」


▼旧市街
 「旧市街が世界遺産に登録されてからはユネスコからかなりの予算がおりるようになったらしく、いま旧市街はめまぐるしく『新しい古い街』になりつつあります。以前は旧市街といえばもう本当に汚くって、水溜りひとつとっても匂ってきそうなほど。上下水道ともに機能していないような感じだったのが、ここ数年ですごく変わりつつあります。イタリアやスペインの大学がラボをつくって、ここに移ってきています」


▼キューバ人は、撮られ好き?
 「キューバ人というのは本当に写真に撮ってもらうことが好きなんです。そして非常に絵になる人が多い。たとえば、解体した豚を運んでいる途中で出会ったこのオジサン。道端の血と脂でギトギト、ベトベトの豚の肉の中に腰を下ろして笑顔でニッコリ。ほんとスゴイです」


▼ダンス好きなキューバの人たち
 「エアコンもない掘っ立て小屋といってもいいような質素な部屋で汗だくになって練習している。こういうところで文化は生まれているんだなあと思いました」
 「カーニバルで踊るときには、アフリカオリジンの人たちが目立ちます。サルサを踊る人が多いのですが、白人も少数ながらいて、スペイン文化フラメンコを踊っていますね」















 約90枚のスライド。写真たっぷり、樋口さんのトークも、キューバを色んな角度から語っていただいた内容となりました。で、最後に樋口さんからのシメコメ。

 「なんというか、キューバと十数年かかわってきまして、経済的に大変だったりするなかで真面目にやっている人、ちょっとずるくやっている人を見てきました。昔はよかったなぁとかって言うつもりはないんですね。キューバ自体はきびしい経済情勢のなかで苦しんできたわけなので、旅行者である僕が昔はよかったとか、あの当時が懐かしいとかいう権利も無いんです。でも、また今後もキューバを訪れていきたいなあ思っています。

 フィデル・カストロはいま今年で77-78才。。明日死ぬかもしれないし、10年生きるかもしれない。キューバっていうのは、経済封鎖っていうのがなければ本当に豊かな国なんですね。今後、キューバっていう国が劇的に変わっていく局面が来るんだろうなと予想しています。おそらく、必然的に。これからもつかず離れずといいますか、一時期のように熱狂してキューバに通ってた時期は正直言って過ぎましたが、今後もキューバに通って写真を撮って、また写真集が出せたらいいかなと思っています」

 樋口さん、本当にありがとうございました。
 

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