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一冊の本から次の本につながっていく文脈。ある本を読んで、本のなかに載っている本とか参考文献に出てくる本とか、著者に関係する別の作家の本とか。。一冊の本からどこまで続くのかわからない見切り発車だけど、ひとまずは始めてみよー
















『アソーレス、孤独の群島―ポルトガルの最果てへの旅』
杉田敦

彩流社 (2005/01)  新刊 2,310円(税込)

はじめの一冊目は、杉田敦著『アソーレス 孤独の群島』。特別な思い入れがあるわけではないのだけど、ユーラシア大陸の西端ポルトガルから約1500km。北アメリカから3750km。大西洋にぽつんと浮かぶアソーレス諸島。なんとなく一冊目感がただようので、ここからスタート。

装丁の美しさに惹かれて手にした1冊。アントニオ・タブッキ、フェルナンド・ペソアの熱心な読者でもある著者は10年来、ポルトガルに通い続けている。前著『白い街へ』ではリスボンに身を浸しながら、ヴェンダースやアントニオ・ダブッキら、かの地にインスパイアされ作品を生み出した作家たちへ思いをめぐらせていたけど、本書ではより著者自身の内側を覗かせるような思索の旅を綴る。途中に何度も挟み込まれる著者自身が撮ったモノクロ写真を眺めながら読み進めているうちに、いつのまにか彼の視線でピコ山を眺め、港近くのカフェのカウンターでよく冷えたヴィーニョ・ヴェルデを飲んで酩酊しているような気分にもなってくる。アントニオ・タブッキの『島とクジラと女をめぐる断片』の中で、クジラはこの島々の間を優雅に回遊しているわけだけど、現実の世界では2003年、イラク戦争開戦前に英米西の首脳会談が開かれた場所でもあったりする場所。幻想と現実のはざ間を見つめる著者の紀行エッセイ集。