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一冊の本から次の本につながっていく文脈。ある本を読んで、本のなかに載っている本とか参考文献に出てくる本とか、著者に関係する別の作家の本とか。。一冊の本からどこまで続くのかわからない見切り発車だけど、ひとまずは始めてみよー
















『インド夜想曲』
アントニオ・タブッキ

白水社(1993/10) 新書 新刊 861円(税込)

ペソアがきたら次はやっぱこの人しかいないかなと。ペソアの研究者としても知られるイタリア人作家アントニオ・タブッキ。リスボンが舞台の作品もいくつかあるけど、代表作をあげるとすれば僕的にはこの本。

「これは、不眠の本であるだけでなく、旅の本である」。冒頭、物語がはじまる前の一文。友人の行方を捜してインドにやってきた主人公の「僕」は、その友人の魂を追いかけるようにボンベイ、マドラス、ゴアと駆け回る。旅の途中で出会う奇妙な人々--預言者のような奇形の兄とその弟。巨根の老人。町に漂うすえた匂い。肌にまとわりついてくる湿度。主人公と一緒に旅しているような感覚はあるけど、どこか地に足がつかずふわふわ浮いたまま主人公「僕」の後を追いかけているような気分で読みすすめていく。インド各地を彷徨う彼が最後に出会ったのは・・・? ちょっと謎めいたストーリー展開。ジャン=ユーグ・アングラード主演で映画化もされててレンタルも可。僕は本を読んでから映画を観たんだけどがっかりすることはなくて、逆に映画は映画ですごく良かった。だいたい原作に沿って作られてるし、酒でも飲みながら観れば本を読んでるのと同じように、街の喧騒とか埃っぽい感じなんかがふわっと目の前にたち現れてくるような錯覚に捉われたりもする。インドかぶれしちゃったヨーロッパ人的視線(逆に偏見ぽいけど)が濃すぎる感もあるけど、そんなに気にならない。須賀敦子の訳が好きになったきっかけの一冊。